不動産を売却した際、あとから必ずやってくるものが『売却した利益にかかる税金』です。
もうけがなければ払わなくていいって聞いたよ!
もうけが出たか出なかったか、それを税務署に判断してもらうためにするのが申告です。
『売ったけど手数料とか色々で手元にお金は残らなかったから申告しなくていいか』と思うかもしれませんが、税務署では不動産を売ったという事実しか把握していないため『いくらで売ったけど、経費がたくさんかかって、手元に残ったのはこれだけ』と申告しないと、あとで『申告していませんね?』という連絡が来ます。
思わぬところで経費算入できるものも多いため、あらかじめ税金についても確認しておきましょう。
申告の流れ
1/1~12/31までの不動産売買の税金の申告は、翌年3月15日までに所轄の税務署に申告を行います。様式は『所得税の確定申告』になります。
お勤めの方だと確定申告をしたことがない方も多いと思います
申告が不安な方は税理士さんに依頼するのも良いと思います。
ただ、田舎の空き家の場合、手元にお金が残らないことも多いです。場合によっては、税理士さんを頼むと赤字になってしまうこともあるため、自分で申告する方法も確認しておきましょう。
申告はおおむね以下のような流れになります。
譲渡所得金額は「売却価格(売れた値段)」から「取得費・譲渡費用(経費)・特別控除」を差し引いた残りの額です。
取得から5年以内に売却した場合は短期譲渡所得、取得から5年以上経って売却した場合は長期譲渡所得の税率で計算します。
持参とe-taxがあります。
各項目ごとに説明していきます!
出典:国税庁タックスアンサー No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
譲渡所得金額の計算について
■課税譲渡所得金額の計算式
1.譲渡価額(収入金額) ー 2.取得費 ー 3.譲渡費用 ー 4.特別控除 = 5.課税譲渡所得金額
1.譲渡価額
譲渡価額とは譲渡による収入金額、不動産を売却した価格のことを言います。
売り上げのことですね!
売却の本体価格の他、固定資産税の精算金も譲渡価額に含まれます。
不動産売買の際は、売却代金の他に『1/1~12/31まで1年分の固定資産税額を365で割り、所有する日数分ずつ負担する』清算金も発生します。この清算金は、売主が受け取ったものは譲渡収入になり、買主が支払った分は取得費となります。
なお、売買代金の代わりに株式を受け取った場合など、金銭以外の物や権利で受け取った場合にはその物や権利の時価が譲渡価額となります。
2.取得費
取得費とは、その不動産を取得したときの価額や取得に要した費用のことを言います。
取得費には下記のものが含まれます。
- 売却した土地や建物の購入価格。ただし建物価格は減価償却が必要
- 購入時に不動産屋に支払った仲介手数料
- 土地や建物を取得したときに納めた登録免許税・登記費用、不動産取得税
- 契約書に貼付した印紙税
- その他、購入の際にかかった費用
出典:国税庁タックスアンサー No.3252 取得費となるもの
なお、申告時には購入時の契約書や領収書等が必要になります
税金も取得費に含まれるんだ!
空き家、しかも親の家などになると、購入時の資料は紛失している方がほとんどです。
実際の取得費が不明の場合は、『譲渡価額の5%』を取得費とします。
3.譲渡費用
譲渡費用は、1.譲渡価額の売買のためにかかった経費です。
譲渡費用には下記のものが含まれます。
- 売却の際に不動産屋に支払った仲介手数料
- (敷地の境界が曖昧な場合)土地家屋調査士に依頼する測量費や境界確認費用
- 売買契約書に貼付した印紙代
- (建物が老朽化している場合など)更地売買のために建物等を取り壊した費用
- その他、売却のためにかかった費用
出典:国税庁タックスアンサー No.3252 取得費となるもの
解体費も経費になるんだ
『売買のために解体した』という証拠があれば経費になります。
売却の間際に解体する場合や測量のこと等は、契約書の特約欄に書いてもらうと良いですね。
建物が老朽化している場合など、あらかじめ解体更地にしておく方が売りやすいケースもあります。ただ、何も証拠がないと「売買のために取り壊したか」が分かりにくいので、不動産屋と交わす媒介契約書に【旧建物があるが、売買のために解体更地渡しとする】と記入してもらってから解体の算段をすると、申告の際に経費として認められやすくなります(※経費化できるか否かはケースにもよります)
4.特別控除
特定の土地や建物を手放す際に特別控除が発生することがあります。
主なものは下記の通りです。
- 公共事業のために土地建物を売却… 5,000万円
- マイホーム(居住用財産)の売却… 3,000万円
- 平成21年・平成22年に取得した土地等の売却…1,000万円
- 低未利用土地等を譲渡した場合……100万円
出典:国税庁タックスアンサー No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
適用条件に合致する案件はなかなかないかもしれませんが、利用できれば大きく納税額を減らすことが出来ます。
平成21年・平成22年に取得した土地等の売却って、1,000万円も控除があるんだ?
リーマンショックのあと、平成21年に出来た租税特別措置法なので、常に「今年で終わり!」になる可能性のあるものではあるのですが、使えたらすごくお得ですねー(2023.2.24)
5.課税譲渡所得金額
1.譲渡価額(収入金額) ー 2.取得費 ー 3.譲渡費用 ー 4.特別控除 = 5.課税譲渡所得金額
こうして、売り上げから取得経費と譲渡経費、特別控除を差し引いて残った分が 課税譲渡所得金額 になります。
長期と短期、所有期間による税率の違い
長期・短期の区分
不動産を5年超持っていると長期、5年以下の保有が短期です。
具体的には、不動産を譲渡した年の1月1日に所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得と区分されます。
なお、所有期間の5年は不動産を購入した日から売った日までの期間、ではありません。売った日の属する年の1月1日現在で判定します。
令和6年中の譲渡は令和6年1月1日で判定するため、平成30年12月31日以前に取得したものは長期譲渡所得、平成31年1月1日以降に取得したものは短期譲渡所得とみなします。
また、贈与や相続の場合は取得時期を引き継ぐこととされています。
長期譲渡所得の税金
長期譲渡所得(所有期間5年超)にかかる税金は、課税譲渡所得金額に20%の税金を乗じて計算します。
この20%の内訳は、所得税15%、住民税5%です。
他、復興特別所得税として、所得税額の2.1%が別途かかります。
課税譲渡所得金額×20%(所得税15%・住民税5%)=所得税額および住民税額
例)課税譲渡所得金額が100万円の場合、所得税15万円、住民税5万円、復興特別所得税が3150円です。
短期譲渡所得の税金
長期譲渡所得(所有期間5年以下)にかかる税金は、課税譲渡所得金額に39%の税金を乗じて計算します。
この39%の内訳は、所得税30%、住民税9%です。
他、復興特別所得税として、所得税額の2.1%が別途かかります。
課税譲渡所得金額×39%(所得税30%・住民税9%)=所得税額および住民税額
例)課税譲渡所得金額が100万円の場合、所得税30万円、住民税9万円、復興特別所得税が6300円です。
譲渡損失が出た場合は?
ところで、本当に赤字になった場合ってどうするの?
資料を持って税務署で相談してください。
うかつに「しなくてもいい」とは言えないです。
案外電話がかかってくる人は多いです。
昔は、赤字になると税金が返ってくることがあったようだけど…
平成16年からは給与所得等他の所得との通算および3年の繰越控除がなくなって、税金が返ってくることはなくなったようです。
ただ、居住用の不動産に限っては、一定の要件を満たすとほかの所得との通算と3年の繰り越し控除が使えるようです。
譲渡所得の申告手続き
1月1日から12月31日までの間に不動産の譲渡所得があった場合は、翌年の3月15日までに所轄の税務署に申告し、税金を納めます。
不慣れな方は、売買時の契約書、不動産屋の仲介手数料の請求書や領収書、印紙のレシート等、かかった費用をひとまとめに資料にして持っていって、窓口の職員さんに相談しながら書類を作ると良いです。
なお、所得税は申告して税額が確定し次第納税、住民税は税務署に申告するとその内容が市町村へ回り、6月から翌5月にかけて通常の住民税と一緒に納税していくことになります。
その他、スマホとマイナンバーカードがあれば自宅から申告することも可能です。
まとめ
ここまで駆け足ではありますが、不動産が売れたときの税金について確認してきました。
通常、不動産を売却する際には2割くらいの税金がかかるんだなーと思っていただけるとよいです。
参考になれば幸いです。