サンタクマではここ近年、空き家バンク登録に力を入れてきました。
特にここ2年では中古住宅の取り扱い件数・取り扱いエリアがぐっと広がり、色々な統計や傾向分析が出来るほど事例が増えてきました。
そこで今回は2年間空き家バンクでいろいろな物件を取り扱った結果、見えてきた傾向をまとめてみました。
空き家所有者さんにとって参考になれば幸いです。
由利本荘市空き家バンクって?
由利本荘市の空き家バンクは、市が空き家の売却または賃貸を希望する所有者から情報提供を受け、「空き家バンク」に登録した物件を市のホームページなどを通して全国の利用希望者に紹介するものです。
サンタクマでは由利本荘市空き家バンクをポータルサイトの一種として利用させていただいております。
- 市で運営していて信頼感がある。
- 手続きを行えば利用者負担なく広告(物件情報)を出稿させていただける
- 案外閲覧数が多い(空き家バンクを通じての問い合わせがある)
上記のような理由から、掲載可能な物件であれば出来るだけ空き家バンクに物件を紹介しております。
- 今までどのくらいの物件を紹介したの?
-
次の表は2024.3.1現在の空き家バンク取扱事業者・取扱件数一覧です。
事業者登録を行ってからの累計ですが、サンタクマの登録実績は16件、成約実績9件です。
2024.3.1時点では登録実績件数、成約実績件数、どちらも市内不動産屋で1位になっています。
- 空き家バンクの登録に必要なものは?
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不動産屋との媒介契約、持ち主さんの身分証明書、土地建物の登記簿、間取り図です。
不動産屋への相談の際、図面があればとてもありがたいです。なければ不動産屋が簡易間取り図を作成します。
市とユーザーが直接登録するんじゃないの?
事前に取り扱い事業者(不動産屋)と媒介契約を交わすことが必要です。
- 空き家バンクに登録するメリットは?
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遠方のお客様へアピールができることです。
また、市内住み替え用でも空き家バンクを見ているユーザーさんはけっこういます。
- 空き家バンクの登録に費用はかかる?
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登記簿を用意する際の登記簿代や不動産屋に行く交通費はかかりますが、市で運営している業務のため、登録に際しての特別費用はかかりません。
- どこの地域でも登録できるの?
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由利本荘市市内であれば登録可能です。にかほ市はにかほ市の空き家バンク登録をおすすめします。
特に県外の物件を探すとき、正直どこから探したらいいかわからない!という方はたくさんいます。
まずは地方都市の空き家バンクを見てみよう!という方に見ていただけることが多いです。
市内の住み替えについても、まずは市の空き家バンクを見てみよう、という方は多いです。
R4.R5年中古住宅のデータまとめ
今回の統計に用いたデータは、令和4年度・令和5年度にお預かりした中古住宅、総数27戸全てです。
戸建て貸家の分は含みません。戸建て貸家は需要がとても高いのですが、築年の古い物件だと初期投資の費用が大きくなることが多く、手放すことを第一目的とした売主さんとニーズが合致しないことが多いです。
中古住宅には、「中古住宅として売却するもの」と、「解体更地にして売却するもの」を含みます。
※空き家バンクには中古住宅としての登録しかできないので、更地にすることを前提にお預かりした中古物件も今回の統計データに含んでおります。
地域
物件所在地域 | 物件総数 | 成約数 |
---|---|---|
西目 | 11 | 7 |
本荘 | 6 | 4 |
大内 | 1 | 1 |
岩城 | 2 | 2 |
矢島 | 2 | 1 |
東由利町 | 1 | 1 |
鳥海町 | 2 | 0 |
金浦 | 1 | 1 |
象潟 | 1 | 0 |
総数 | 27 | 17 |
サンタクマは西目の不動産屋なので、やはり西目の物件数が一番多いです。
他、旧本荘市や旧郡部、にかほ市等まんべんなく少数ずつお預かりしている状況です。
西目・本荘以外の物件も引き受けてくれますか?
地域特性など詳しくないことも多いのですが、それでも良ければお受けいたします。
西目以外の地域に関してはどうしても知識が足りないため、お預かりする際にいろいろなことをおうかがいすることになります。
- 地域の約束事はあるか
- 町内会への参加は必須か否か
- 神社やお寺等、おまつりする神様がいるかいないか、いる場合の当番について
- 降雪量や風の強さ、地域の天気について
- 道路の権利関係のこと
など、売主さんの「当然知ってると思ってた!」が不動産屋にはわからないことは案外あるため、ご協力いただけるとありがたいです。
築年数と売却方法
築年 | 総数 | 中古 | 解体 | 成約数 |
---|---|---|---|---|
1950年以前(昭和25年) | 2 | 2 | 0 | 2 |
1960年代(昭和35~44年) | 7 | 3 | 4 | 6 |
1970年代(昭和45~54年) | 4 | 4 | 0 | 2 |
1980年代(昭和55~平成元年) | 8 | 7 | 1 | 4 |
1990年代(平成2~11年) | 2 | 2 | 0 | 1 |
2000年以降(平成12年以降) | 4 | 4 | 0 | 3 |
合計 | 27 | 22 | 5 | 17 |
1980年代(築40年前後)を境に、中古住宅で売却可能な物件と解体更地で売却した方が良い物件に分かれてきます。
物件の状態が良ければ中古として流通可能ですし、状態が悪ければ解体をおすすめしています。
1950年代以前築の物件は「手入れがされていて状態が良いので今まで建っていた」物件だったので買い手が付きました。2件どちらも築90年超えです。
基本的には、築年が古くとも状態の良い物件であれば売却可能です。
状態がいいってどういう物件かな
「大規模修繕が必要ではなく、すぐに住み始められるような物件」、もしくは「リフォームは必要だけれど新築の物件には出せない味のある激シブ古民家」が状態の良い物件に当たります。
古民家は愛好家がいるのでご相談ください。
秋田なので流通速度はのんびりです。
また、地域によっては新築需要がないため更地に需要がなく、老朽化した物件であっても安価な中古住宅として売り抜けた方が良い、という地域もあります。
逆に、本荘地域・西目地域はまだ新築需要があるため、中古住宅として売却してリスクを負うよりも、解体更地で売り渡した方が良いとおすすめすることもあります。大内は大内出身の不動産屋さんが本荘市内に多く、弊社はあまり依頼数がないためデータ不足ですが、大内・由利地域は解体更地の方が良い場所がありそうです。
成約金額
金額区分(円) | 売出数 | 成約数 |
---|---|---|
100万未満 | 5 | 3 |
100万以上400万未満 | 5 | 4 |
400万以上700万未満 | 8 | 4 |
700万以上1000万未満 | 1 | 0 |
1000万以上 | 8 | 5 |
合計 | 27 | 17 |
(上記区分とはズレがありますが)50万以下、200~400万、500~700万、1000万円以上の4価格帯が多いです。
一番安い売却額は5万円、一番高い売却額は2300万円です。
中古住宅としての売却の場合、築年が古い物件(70~80年代)は200~400万円の成約が多いです。水回りを直す・畳をフローリングに変更する・外壁に手を入れる等、快適に暮らすためのリノベ・リフォームを行い、改装費も含めたトータル価格が800~1200万程度に収まるような物件を探す方が多いです。
移住向けの要リフォーム物件の場合、300万円以下の価格帯に需要があるようです。
また、築年が古くとも、水回りがリフォームされている物件は500~700万円ほどで流通している傾向があります。最新設備でなくとも、平成中期くらいの設備の古さであれば印象が良いようです。
モルタル・タイル造りのお風呂の場合、ユニットバスへの改装に200万円程度かかります。モルタル・タイル解体、防水加工、基礎強化などの工事+ユニットバス本体代です。
ユニットバスからユニットバスへの入れ替えであれば本体代金に工賃程度で出来ることが多く、工事費用が安く済みます。
そのため、中古物件はユニットバスの方が好まれる傾向があります。
解体更地での売却の場合、売値400~700万になることが多いです。昔の住宅は現在の住宅より広く、解体費がかさみます。前面道路の幅や隣地との距離、ダストボックスを置く敷地があるか否か等の条件等にもよりますが、300~500万円の解体費がかかる家も少なくないです。また、立派な庭があり、樹木や池、ブロック塀・大谷石の塀・庭石等があるとその分の撤去費用がかかります。解体費や境界標復元測量費等を除くと、手残り200万以下になることが多いです。
面積が大きい土地は、坪単価が割安になるのを我慢して「買主が買えそうな」価格をつけると成約する可能性が高いです。
1000万以上は築1~20年ほどの築浅の物件に多いです。住宅ローンの残債があることも多く、抵当権解除のためには一定価格よりは値段を下げようがないことが多いです。
これも、3年前に3000万で建てた家なので2800万で売れるかというと微妙な案件も多いです(フルローンが組めるなら新築したい人が多いため)
50万円以下の物件の場合、1・地域として流動性が低い場所の物件、2・築年が古い物件、3・一般に流通させるには難しい要素のある物件、4・物件処分を目的としている、等の理由のうち、複数該当するものが低廉な価格で売り出されています。
築年が古く、解体費が高くなることが予想される物件や、修理すべき箇所がたくさんある物件など、「査定を通して出てくる値段は妥当なものの、じゃあその金額で購入する人がいるか(修繕費を考えると手を出せない)」という物件は、あらかじめ「修繕費相当額を値引いた価格」で売却し、修繕は買主側に行ってもらう、という考えで低廉な価格付けを行うと流通させやすいです。
「売却して手元にお金を残す」よりも「売却して負の不動産を処分したい」気持ちの方が強い方にしか勧められない手ではありますが、周辺部の地価がずっと下がっていること・解体費は物価上昇等でこれからも上昇していくことなどを考えて、「安価でも手放す方が得か、ホールドする方が得か」を判断していただきます。「タダでもいいからもらってほしい」にまで気持ちが行くのであれば、その直前「安価でもいいからもらってほしい」の段階で手放す方が良いと考えております。
そういった低廉な物件には買主側にもメリットがあります。自分が選定した工務店に依頼したり、DIYで手間と暇をかけて自力で修理したりと、売主側で想定した修繕費より安く修理を行えればお得に物件を手に入れることができます。
中古住宅売買における傾向分析
以下は上記データ・現地状況等から、売れた物件・売れにくい物件の傾向をまとめたものです。
1.すぐ住める物件は売れやすい
水回りが問題なく使える物件は売れることが多いです
風呂はユニットバスになっている方が印象が良いですが、タイル・モルタル造りでも現役稼働している場合はそこまでマイナスの印象にはなりません。
500~800万程度の物件の場合、水回りリフォームが出来ている物件は流通しやすい傾向にあります。
もちろん、10年以内くらいにリフォームが出来ているのに越したことはないのですが、平成10年代リフォームくらいの古さであっても綺麗に掃除できていれば比較的悪印象ではないと感じています。
逆に、「数年住んでいないため水回りに不安がある」物件は中程度に安価(300~600万程度)であっても反響が悪い傾向にあります。
2.割安な物件は売れやすい
割安な物件は売れやすいです
当然ですが、お得な物件はみんなが欲しい物件です。
買主側も、色々物件を見て相場観がある買主は案外たくさんいます。そういった買主(たち)がお得な物件を見つけると、短期間に複数の申し込みがあったりします。
土地や状態など、条件が悪い物件でも安価だと案外売れます。
交通の便が悪かったり、要修繕の物件であっても、1~20万程度のごく安価な値付けだと従来の需要とは違う需要が生まれてきます。セカンドハウスにしたり倉庫にしたり、大家業を始めるために戸建てを買ったりと、居住目的以外での購入が増えてきます。
売却より処分に重点を置く場合は、思い切って安価な値付けをしてみるのもよいと思います。
3.立地や景観が良い物件は売れやすい
海や鳥海山が見える物件、駅や学校、スーパーの近く。
景色が良かったり、便利な場所にある物件は売れやすいです。
景観の良い物件には一定の需要があります。
特に鳥海山については「どうしても山が見える物件がいい!」という方がいます。海については、冬の日本海の風の強さを理解していただいてからでないとちょっと厳しいときもあるのですが、やはり根強い人気があります。
また、子育て世帯などは通学のことを考え、駅や学校に近い物件を選択する傾向があります。
4.内部が片付いている物件は内見がある
不動産は比較的高価な「商品」なので、見た目を整えていただけると好印象です。
どのくらい片付いてればいいのかな
基本的には、友達の家に遊びに行ったとき「お、綺麗に片付いてるな」って思う程度であれば大丈夫です。
逆に「うわ、もうちょい掃除した方がいいのに」と思う程度の場合は少し気合を入れて片づけていただく方がありがたいです。
本当はすっきりと全てモノを撤去していただく方がいいはいいのですが、年数を置くよりは早く売りだした方が良いケースもあります…
仏壇や写真類、賞状の額等、前の使用者さんの気配のある設備や装飾などは好まれない傾向にあります。
私も撮影を行う際はなるべく生活感が出ないように、撮影方向に向けて物を片付けていただいたりはするのですが、ごちゃごちゃした印象を与えるほどに家財が残っている場合、あまり問い合わせ等の反響が来ないなあと感じております。
また、壁紙や床、キッチン壁に大きな汚れや染みがあるものも反応が鈍いです。
5.農地付き物件は売れにくい傾向にある
R5.4月から農地取得面積の下限要件が撤廃され、一般の方でも農地を手に入れることが出来るようになったため、弊社でも農地付き住宅を取り扱うようになったのですが、基本的に農地付きは難しいです。
やっぱり今でも、「農地は農家じゃなきゃ買えないんでしょ?」って言われます。
農地を農地のまま権利移転する場合の3条許可ですが、家庭菜園をするなどして、農地を農地として利用するという計画書・申請書を書くと案外許可は出てきます。
数件やってみたのですが、農地法3条での権利移転の場合は買主さんが直接農業委員会に行って話をする方が許可が下りやすいと感じました。
当然ですが、不動産屋は行政書士ではないので3条申請の代行は出来ません。不動産屋にできることは、事前に各地域の農業委員会と相談して必要な書類や書式を教えていただいたり、申請者がどこに行けば良いのかを確認したりするところまでです。それ以上の対応が必要な場合は行政書士を紹介しております。
書面は申請者(売主・買主)が作成する必要があるはあるのですが、買主が農業委員会の事務局に行って「空き家に付随した農地である」「これからどのような利用を行うか」を相談すると、どうしたらよいのか相談に乗っていただけます。
なお、「現在農地として利用されていない」土地の場合、原野や雑種地に地目変更した方がよいこともあります。
(築年の古い物件にままあることなのですが)農業用倉庫ではなく住宅の乗っている土地なのに地目が宅地ではなく畑だというケースや、風除けの竹やぶを撤去してまで農地に戻す価値のない小さい畑など、手間をかけても今後農地として利用することはなさそうな土地は地目変更を行うことをお勧めしております。
特に「現在住宅が建っているけど底地の地目は農地」の場合、早急に地目変更を行ってください。解体してしまうと地目変更が難儀になります。
この辺りは相続登記を行う際に、現況に合わせた地目に変更すると比較的楽に地目の変更が出来るそうです。
いずれにせよ農地は、一回は農業委員会に相談に行く必要があります
6.郊外の物件は売れにくい
郊外とか言葉を濁していますが、雪の多い、旧郡部の山の方の地域の物件です。
なんとか、どうにかしたいとは思ってはおりますが、不利な地域はやはりあります。
売れにくいは売れにくいのですが、地域の方の需要があることもあります。売り出していると「ここを探していた!」と運命の出会いを果たしてやってくる方もいます。
不利な地域に関しては「いい出会いを気長に待つ」心持ちでいていただいた方が良いです。
最初からダメって言っちゃうと一歩も前に進めなくなってしまうので、まずは「売ってるよ!」って声を上げるところから始めましょう。
まとめ:売れる売れないは要因が複合的に合わさって決まる
多くの中古住宅物件は、一つの属性だけを持っているわけではなく、3~6つの属性を抱えています。
- 大規模リフォームが必要で農地付きだけれど景観が良く、値段が割安
- すぐ住める物件だけれど中が片付いていなく荷物がたくさんある
- すぐ住める物件で価格も安価だけれど立地が不便
- ほぼ新築だけれど価格も新築並みで立地が少し不便(とても不便なわけではない)
- 築100年近い住宅で立地も不便で修繕必要個所もたくさんあるけれど安価で味のある風体をしている
などなど、中古住宅というものは複数の属性を持った物件が多いです。
安いというのはかなり強い要因ですが、他の要素に押し負けることもあります。
逆に周囲に住宅がないところでのんびり暮らしたいから不便な立地の方がよい、という方もいます。
まとめ:売り出す方向性を考えよう
空き家バンクに掲載する中古住宅の場合、売主さんが売却に対して持つ方向性はいろいろあります。
- タダでもいいからもらってほしい(費用はかけたくない)
- 安価でもいいから処分したい(少しは残ったほうが嬉しい)
- 諸費用がかかってもいいから孫子の代に残したくない
- 高額で売りたい
- 適正価格=時価で売りたい
- 適正価格=基準価格・公示地価程度で売りたい
当然、早く・高く・面倒なく買い手がつけばいいのですが、なかなか難しいこともあります。
自分の物件がどのような特性を持つかをよく考えて、どんな方向性で売り出すか、考えてみてください。
物件によっては「その条件だと厳しいと思います」とアドバイスさせていただくこともありますが、方向性を決めるのはあくまで売主さんです。不動産屋は出来るだけ売主さんの方向性に寄り添った売却を目指します。
良いところを押し出して買主候補さんに見つけていただいて、不利なところもご理解いただける方に選んでいただければなあと思っております。
終わりに
前半は統計データ、後半は売れやすい/売れにくい物件の傾向の紹介でしたが、いかがでしたでしょうか。
中古物件はとにかく見てみないことには何とも言えない案件が多すぎるのですが、データにすると一定の傾向はあります。
正直、由利本荘市は流動性が高い地域ではないため、売り出しから引き渡しまで数年かかる物件も稀ではありません。
データ上難しい案件でも、それでも誰かがどうにかしていかなければ前にも後にも進めなくなります。
持ち主さんがどうしたいか、よく相談して方向性を決め、出来るだけその方向に沿った売却が出来るように頑張るのが不動産屋です。
秋田県内の住宅の7戸に1戸が空き家ともいわれています。家屋が老朽化してどうにもならなくなってしまう前に、自分や家族がその家をどうしていきたいのか、どのように次の世代へ渡すか、よくよく考えていただければと思います。
この記事が空き家所有者さんの参考になれば幸いです。
売却をご検討の際には弊社にもお声がけいただけると嬉しいです!